ますます人の命を軽視した事件が増加の一途だ。この国の人はおかしくなってきていることは明白だ。自分のことに過度にこだわる人が増えていて、いっぽうで他者への共感が薄れる傾向が顕著だ。
自分の思い通りにならない人はどうでもいい存在として扱うことに抵抗が少なくなっている。その他者は自分と別の感情、意志、考えを持った存在であることを認識できないということだ。それが人間であっても動物であっても、自分の思い通りになる存在だけを愛し、思い通りにならない存在は敵と見なすという極めて理不尽で、不気味な思考パターンに陥った人が増えているのだ。いわゆる「パーソナリティ障害(Personality disorder)」だ。
パーソナリティ障害は、かって「人格障害」と呼んでいたもので「病的な個性」または「自我の形成不全」の状態を言う。精神疾患のひとつに含まれるが、健全者として通常に仕事に就き、優れた功績を残している人は後を絶たない。その特徴は、その他の精神疾患と比べて、慢性的であり全体としての症状が長期に渡り変化しない点にある。しかし神経症なども治癒するまでに数十年の歳月を要するケースもあり、その辺りの判別も難しい。
パーソナリティ障害には、最近増加が著しい自己愛性パーソナリティ障害をはじめ、次のパターンがあります。
クラスターA
自閉的で妄想を持ちやすく奇異で閉じこもりがちな性質を持つ。
・妄想性パーソナリティ障害
・統合失調型パーソナリティ障害
・統合失調質(シグイド型)パーソナリティ障害
クラスターB
感情の混乱が激しく演技的で情緒的なのが特徴的。
・境界性パーソナリティ障害
・演技性パーソナリティ障害
・反社会性パーソナリティ障害
・自己愛性パーソナリティ障害
クラスターC
不安や恐怖心が強い性質。周りの評価が気になりそれがストレスとなる性向がある。
・回避性パーソナリティ障害
・依存性パーソナリティ障害
・強迫性パーソナリティ障害
「パーソナリティ障害」によるあきれた事件は、マスコミが騒ぐ対象だけではない。もっと身近にもっと数多くの理不尽が繰り返されているのだ。
理不尽を行う人には、それなりの背景があり、彼、彼女らもかっての犠牲者である場合が少なくない。その痛みはどのようにして生じたのか、それを知り、彼、彼女らの痛みを分かち合うことをしない限り、パーソナリティ障害をもった人を救うことはできない。
それは簡単にできることではなく、何の知識も持たない人が善意で取り組んでも逆に事態を悪くしてしまうだけの方が多い。
そういう自分も最近、交流分析で言う「ラポ」にはまってしまい、後になってしまったと思ったばかりである。しかし、私はそれを恥じること、さもしいとも思っていない。自分にはしっかりとした行動基準があり、私は私の魂の指揮官として、感情はほぼ完全にコントロールできていて、常に客観視していた。それでもクライマックを想像する点で落度があり、助けることができないばかりか、むしろ強化させる結果になったのではないと口惜しい思いをしたばかりだ。
パーソナリティ障害について、そのプロフェッショナルでさえ、十分な処置ができない状態であり、医療体制も整っていない。唯一に近い状態で「躁鬱病」が薬を出してもらえるような状態である。しかしいまや「パーソナリティ障害」を放置できる状態ではないのだ。
対策の最初の一歩は、まず自分を知ることです。ライフスキルのひとつ自己認識スキルに磨きをかけて、そして次に相手を知ることです。
そもそも「パーソナリティ障害」はなぜ起こるのかについて考えてみましょう。
それには親子の関係について、認識を改めることから始めなければなりません。
そこで、まず子育てのマイルストーンを説明します。ここで注意してほしいのは、それぞれの時期が、バラバラに完了しているのではなく、因果関係でつながっっている点です。
■0歳~5ヶ月 安心認識の時期
最初の時期の目的は、守られている安心感の内に環境に慣れさせてあげることです。ですからお母さんの守ってあげるやさしい気持ちが大切です。言葉が分からない赤ちゃんとスキンシップで気持ちを伝えていきます。
この時期の乳児は環境に慣れていく時期です。生まれたばかりの乳児にとっては五感から入ってくるすべてが不安です。母親の保護が頼りの時期で、母親の心からの愛情で、しっかりやさしく抱いてあげることが最大の対策です。
この時期に不安を与えると、環境順応に時間がかかるこどもに育ちます。保護者の五感への配慮が大切です。幼児が不安がるのは止められません。不安の材料を親が取り除いてあげることが親の自立です。
■5ヶ月~10ヶ月
親離れの芽生えの時期です。
寝てばかりいた乳児が、ハイハイするようになります。
この時期の目的は、環境に対して安全、安心の内に行動で確認させて慣れさせてあげることです。
幼児には、すべてが「不思議」の対象です。好奇心が旺盛で、触って確かめようとします。危険を心配して、触らないように注意しますが、本人の自由意志を阻害する注意の仕方は好ましくありません。触らない注意をするより、置かない注意をしてあげることが大切です。
実は、これができるのが自立した親の特徴です。つまり相手を変えることはできないが、自分を変えることはできる。相手をコントロールせずに自分をコントロールします。こどもに注意するより、自分が注意することで、危険を除いておきます。
この時期から、躾の準備をします。躾は親に従うのが基本です。
■10ヶ月~18ヶ月 躾で行動の制約を教える
ハイハイからヨチヨチへ。行動範囲が広がり、こどもの世界は一気に拡大しますが、同時に危険も増えます。
■18ヶ月~5歳の時期
こどもの基礎が作られる躾の時期です。
この時期の目的は、制約を教えるために、しつけによって、自分がアクションすれば何でも叶うという万能感をゆっくり排除します。
育てやすい、自律できるこどもに育てるには、この時期に制約を教えて、自分の限界を教えておくことが肝心です。自分と他者は違う、人と人の間には境界があることを感じさせます。こどもを否定するのではなく、していいこと、してはいけないことをきちんと教えます。
たとえば、親を叩いたりしますが、「痛い、そんなことをしてはダメ」と教えます。怒るのではなく、落ち着いた態度、表情で、真正面から言葉、表情、態度が矛盾しないしっかりとしたコミュニケーションをします。
かわいいからと、まだなにもわからないからと甘やかすと、万能感を持ったまま、制約も限界も知らない無軌道な大人になる可能性が潜んでいます。まだなにもわからないからきちんと教えておくのです。こどもは小さいときに教えておくほど、手間も労力も費用もかかりません。
この時期に教えておかずに、3歳~5歳の時期に教えようとしても、こどもも万能感を手放そうとしなくなり、わがままを主張するので、何倍もの労力がかかります。
■3歳~5歳
親を真似る時期
男の子はお父さんの真似を、女の子はお母さんの真似をします。
この時期の目的は、情緒の安定です。それには父親・母親との間のバランスのとれたコミュニケーションが必要です。夫婦が力を合せて、厳格な父の心、保護的な母の心をしっかり教えるようにします。
「三つの心」でお話したように、親の心には厳格な父の心、保護的な母の心があります。こどもたちは親の真似をしながら、親の心も学んでいきます。
厳格な父の心からは、自分を抑制する力を身に着けます。母親の保護的な心からは自然な自分を身につけます。
この時期に、お父さんと接する機会が少ないと、厳格な父の心が身につかなくなり、やりたい放題になります。その分、お母さんがお父さんの役割をこなそうとして母性的な気持ちを抑圧すると、こどもは受容されていないと感じて、不安になります。両親の愛情ある関わりが必要な時なので、忙しくてもお父さんの育児参加を計画的に実行します。
それが不可能な場合は、母性的な気持ちを抑圧せずに受け入れていることをたっぷり伝えながら、お父さんの役割を果たすようにしてください。
結婚した後、厳しく支配的な妻になる女性がいます。しかし他者に対しては気がひけて主張ができないというアンバランスぶりで、これが同一人物かと目を疑うような人です。
このような自立できない依存体質は、この時期に、お父さんと接する機会が少ない、あるいはお母さんの言いなりになっていたお父さんしか知らないのが原因です。父親から自律することを学んでいないのです。
また、この時期、言うことを聞かないと、叱り飛ばす親を見かけますが、効果はありません。自律が身についていないので、聞いたふりをしているだけがほとんどです。注意しても効果がないのでイライラするし、一層激しく感情的に叱りますが、そんなことにならないように、「10ヶ月~18ヶ月」の時期にしっかりしつけておきます。
学業は、小さいときに習慣化させておくと、大きくなったときも楽です。親の真似をするこの時期は、親も熱心に勉強し、スポーツするようにします。またボランティア活動に親が参加することも大切です。こどもの前での夫婦ゲンカや、テレビを見てごろ寝するようなことはやめてください。
■5歳~12歳
境界を認識する時期
「自立」を教え、自然に「自立」を受け入れさせるのが目的の時期です。
この時期には、自分と他者は違うことを教えます。その教え方は自分のことは自分でさせる。こどもが助けを求めないのに助けを出さないことが肝心です。
実は、こどもが助けを求めないのに助けを出してしまって子育てに失敗している親が多いのです。たとえば、学校から帰ってきたこどもに勉強しなさいと言うのが、それです。寝る前に歯を磨きなさいと言うのもそれです。
親がこどもの行動に関わると、自分と親は他者とは思えなくなります。自分のことは自分がしなくても親がしてくれると思います。何もしなかったら親が言うだろうと考えるようになります。これでは万能感が断ち切れません。
この習慣が大人になっても続き、会社に行けば、用があれば上司が言うだろう、家庭に帰れば、嫁がするだろうと考えます。自分と他者の境界がない依存体質がすっかりしみこんだ人間になります。
この時期に徹底して教えるべきは、自分のことは自分でする、助けが必要ならはっきり自分で助けを求める意思表示をさせます。
自分のことは自分にさせるには、自分の計画は自分で立てさせて、実行させることです。親は、結果だけでなく、それ以上に様子(プロセス)を見てあげるようにします。
■12歳~18歳
親離れの時期
この時期の目的は選択と行動と結果の因果関係を理解させ、最適な結果が出せるように計画性のある行動ができるようにさせることです。
この時期は、境界の認識を深めさせることです。よくある「いい学校に入る」は親の問題でなく本人の問題です。本人が考えて選択~行動できるように育てていく。それが自立のプロセスです。
自分の行動と結果の因果関係と自己責任が理解できるようにします。自分の選択と行動の結果への理解、選択は自分がしている認識を深めます。
その方法は、5歳~12歳の頃とは格段に違います。5歳~12歳の頃は強く言えば説得力もありましたが、この時期は反発するようになります。感情的な対応はますます混乱に誘うだけで、きちんと伝えたらきっと分かると強い信念のもと、穏やかで確信に満ちたコミュニケーションが功を奏します。
「勉強しないとついていけなくなるよ」と勉強を催促しても、こどもは「大丈夫」と返事します。親にしたら、「大丈夫でない」と言いたいのですが、否定は口論になるだけで互いに感情的になるだけです。まず信じます。「それなら約束してください。今度の試験の点数が80点以下だったら、外出禁止にしますよ。いいですね」と感情的にならず毅然と落ち着いた口調で話します。
もし80点以下なら、約束した通りにします。自由は良識と良心でできていることを教えます。責任をとれないようなら自由を語る資格がないことを教えます。
それでも、次回も同じようなことになるかも知れません。しかし大事なことは、親の言うことに言いなりに従わせるのではなく、因果関係を自分でマスターすることです。また同じ約束をします。
小さいときに学習を習慣化させておくと、大きくなったときに学業も楽です。
以上、0歳から18歳までの子育てのマイルストーンの概要を説明しました。
ここで注意したいのは、親と子供では全然立場が違うということです。
親は子育ては全体的があると信じ込んでいますが、幼児期のこどもには単一のもので、つまり一回、一回の関係でしかないのです。幼児が持つ一回一回の欲求を満たす人が幼児にとっての良い人であり、満たさない人が悪い人なのです。ですから朝の幼児の欲求が一度あって、それを満たした親はいい人ですが、昼に幼児の欲求があり、それを満たさなかった人は良くない人なのです。そこで親、保護者に一貫性がないと幼児は安心感を持てなくなってしまうのです。思い通りにならないと「悪」、思い通りになると「善」というように認識していくのです。
しかし、現代の親は、ケータイや美容など、自分に関心があることが多いので、こどもの一回、一回の欲求に充分応えていない場合が多いにもかかわらず、全体的にケアしていることで、十分なケアをしていると思い込んでいる側面があります。
このための人生早期に親に対して不信感を持ってしまい、「白黒思考」が強くインプットされてしまうのです。
その上、離婚などによって親がストレスを抱えた状態で、3歳~5歳 親を真似る時期を迎えることになると、子供は不安を覚えることになります。
さらに5歳~12歳の境界を覚える時期に、外部環境との接触を通じて、3歳~5歳の時期に生じた不安が強化されることになり、パーソナリティ障害が生じてくるのです。
親子の関係は、弱愛でも、無関心でも問題があり、終始「バランス」が問われいています。バランスが悪いと不安が強化されてしまいます。私もOK,あなたもOKというように互いに尊重して人権を大切にできる自他尊重のあり方は、自分を愛せる能力が出発点です。自分を愛する能力が不足している状態、つまり不安が自己愛にこだわる自分を作り出し、他者への関心にまで気が及ばないパーソナリティ障害者にしてしまうのです。
特に母娘の関係は干渉が強く、成人しても娘は干渉を受け続けます。母親がパーソナリティ障害があった場合、娘は息苦しさの原因が分らないまま、受け継ぐことになり、それが子供に影響するということが起こっています。パーソナリティ障害は広がる一方になり、最初にあげたような問題が増え続ける状態になっているのです。
では、どうすればパーソナリティ障害から脱することができるのか?
パーソナリティ障害のそれぞれ各タイプにふさわしい対策を打つことにあります。
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